自然周期採卵・低刺激採卵は、患者さまの卵巣機能によってはおすすめできる場合もありますが、そうでない方も多くいらっしゃいます。たとえば若年で卵巣機能も高く、1回の採卵で多くの卵子の採取が見込めるにもかかわらず、自然周期採卵・低刺激採卵を行うのは、患者さまにとって複数回の採卵を必要となり、不利益である可能性があります。基本的には卵巣刺激における採卵におけるリスクには卵巣過剰刺激症候群(血栓症を含む)、卵巣茎捻転と、針を穿刺することによる出血、感染、膀胱・腸管などの損傷のリスクなどがあります。自然周期採卵・低刺激採卵を行うことは卵巣過剰刺激症候群・卵巣茎捻転・血栓症のリスクを低下させることができますが、複数回採卵を行うことは、その都度血管・膀胱・腸管などへの穿刺のリスクを負うこと、また費用的にも負担が大きくなります。卵巣過剰刺激症候群・卵巣茎捻転・血栓症については、熟練した医師が薬剤の量をコントロールしながら卵巣刺激を行うことでかなり減らすことができます。また近年卵巣過剰刺激症候群に対して非常に効果の高い薬剤も開発されています。
当院では、必要最小限の治療でご妊娠いただけるよう、個々の患者さまの卵巣の機能や年齢、薬剤への反応性などを考慮して、その患者さまにとって最も適した卵巣刺激法を行っていきます。そのため自然周期のみで採卵を行う場合と比べ、より少ない周期数で妊娠へ向けて進めていくことができます。
当院で、年齢別に何回採卵すれば妊娠・出産まで至れるかについて例を挙げますと35歳以下、35-40歳の患者さまでは、初回採卵での妊娠率はそれぞれ51.7%、38.5%でした。また、複数回採卵を行った際の累積出産率は62.9%、49.6%でした(当院の年齢別妊娠率の詳細なデータは体外受精の項をご覧ください)。
ただし、患者さまの卵巣の機能によっては自然周期で採卵を行うことをお勧めする場合もあり、周期ごとの卵巣刺激法については医師とご相談ください。

医療法人社団栄賢会梅ヶ丘産婦人科